cunning move かの騎士が遺した言葉は、もはや呪いのようなものだとすら思う。
今でこそ光の戦士、世界を救った英雄と呼ばれる彼女だが、そんな彼女を誰が守ってやれるのだろうかとアルフィノは思っていた。
「また君は…こんな夜更けに一人で泣いていたんだね」
真夜中の石の家。暁の面々が時々滞在するために設えられた部屋は、ほとんど人の出入りはない。だからこそ、彼女はここに戻ってくるし、仲間たちが少ないタイミングを見計らってベランダでひとり静かに泣いている。この事実はアルフィノと、人の気配に鋭いサンクレッドだけが知っている。
彼女はどんなことにも弱音を吐かず、仲間の前ですら暗い顏をしているところをあまり見せない。元来の彼女の性格がそうさせているのだとしても、あまりに自分が無力に感じてしまう。支えになりたいと思っても、結局いつも支えられるのはこちらの方で。
1973