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    片栗りり

    @lily_kata9ri

    FF14のうちの子創作とか⚡の二次創作とか自由にやります

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    片栗りり

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    pixivより 2024年3月1日投稿したもの

    オル光♀の匂わせありのアルフィノ→光♀です
    光♀はなんとなく名前を出さずに書いてみました
    私の頭の中ではうちの子のハイラン女子のレインと思って書いていました。

    #FF14うちの子創作
    ff14OurChildCreation

    cunning move かの騎士が遺した言葉は、もはや呪いのようなものだとすら思う。

     今でこそ光の戦士、世界を救った英雄と呼ばれる彼女だが、そんな彼女を誰が守ってやれるのだろうかとアルフィノは思っていた。

    「また君は…こんな夜更けに一人で泣いていたんだね」

     真夜中の石の家。暁の面々が時々滞在するために設えられた部屋は、ほとんど人の出入りはない。だからこそ、彼女はここに戻ってくるし、仲間たちが少ないタイミングを見計らってベランダでひとり静かに泣いている。この事実はアルフィノと、人の気配に鋭いサンクレッドだけが知っている。

     彼女はどんなことにも弱音を吐かず、仲間の前ですら暗い顏をしているところをあまり見せない。元来の彼女の性格がそうさせているのだとしても、あまりに自分が無力に感じてしまう。支えになりたいと思っても、結局いつも支えられるのはこちらの方で。

    「アリゼーには言わないで」

    「わかっているよ」

     彼女を慕うアリゼーが、こんなところを見たらきっとひどく心を傷めるだろう。そして自分と同じく、何もしてやれない無力感に苛まれることになるだろう。

    「久しぶりに、あの人のお墓に行ってきた」

    月に照らされた彼女の白い頬にきらりと一筋、涙が伝う。

    「第一世界に行ったり、世界の果てまで行ってみたり…アイティオン星晶鏡でのことも、ありがとうって伝えてきた」

    「……そうか」

    「もう吹っ切れたと思ってたのに、やっぱり思い出すと悲しい」

    アルフィノにとっても、彼の喪失はもちろん悲しい出来事だった。ただ、彼女が彼に抱いていた感情は自分とは少し違った。

    「死んじゃってから好きだって気付いたの、バカだよな」

    目を赤くしたままへにゃりと笑う顏がなんとも痛ましくて、どうにか彼女を救いたいと思うのに、アルフィノには最適解が導き出せなかった。兄貴分のエスティニアンならどうするか。相談しようにも、彼女の隠す弱みを他の誰かに晒すわけにもいかず。

    「せめて、私の前でだけは、無理に笑わないでほしい」

    オルシュファンの代わりになどなれやしないが、彼女を支えたい気持ちは確かだ。仲間としての感情を一つ飛び越えてしまっている自覚もある。

    「傷を癒すには時間がかかる…私では君の支えには到底足らないだろうが、それでも私は」

     彼女がオルシュファンに抱いていた恋心。オルシュファンも彼女のことを確かに好いていたのだろうと、当時を傍で見ていたからこそ、今になってからよくわかった。自分がいつしか彼女に抱いていた感情も恋だと気付いてからは故人へ嫉妬すら覚えた。

    「仲間なのだから、頼っておくれ」

    「アルフィノ……」

    彼女の隣に立って気遣うことが精一杯のアルフィノにとって、オルシュファンという存在は高い壁でもあった。体格の差だけでなく、歳も彼女より下で。勝ち目のない戦に身を投じるようなものだと感じている。

    「今はまだ頼りないだろうが、じきにあなたの背も追い越してみせる」

     しかし、いつまでも立ち止まっている場合でもない。アルフィノは拳を硬く握りしめて、彼女へ向き直る。

    「彼のことを忘れる必要はない。ただ、あなたのことを大切に思うのは私も同じだ」

     自分よりも頭一つ分は背の高い彼女に両手を広げて、さあおいでと手招く。顔をくしゃくしゃにさせて、琥珀色の瞳からぼろぼろと涙をこぼし始めた彼女は、差し出されたアルフィノの腕の中に恐る恐るといった様子で収まった。

    「いつからそんな大人になったんだよ」

    「あなたに比べたら、私はまだ子供だよ」

    ぐずぐずと泣く彼女の背中を優しく撫でながら、つられて涙が出そうになる。

     肩に乗った彼女の重みに愛おしさを感じて、いつか近い未来で彼女の背を追い越したら伝えようと思っていた言葉が喉から漏れ出てしまいそうになって、下唇を噛み締めた。

    「アルフィノは優しいね」

     そんなことはない、と言いかけてぐっと言葉を飲み込んだ。優しさなんかではなく、弱みにつけ込んでいる狡い男なのだと思いながら、彼女の背中に回した両手に力を込めて強く抱き締めた。

     こうやって、いつか自分のことを頼ってくれたら、男として見てくれたら良いのに。弱さも傷もすべてをさらけ出して、自分に縋ってほしい。しかし、まるで縋っているのは自分の方だな、と情けなさで視界がじわりと滲んだ。

    「私たちふたりだけの秘密だよ」

    「アタシの方がお姉さんなのにな、頼ってごめんね」

     狡いやり方だ。そう思いながら彼女を離す気にもなれなかった。だって彼女は朝になればきっと、飄々とした態度で何もなかったように振る舞うのだから。大人だから。ならばせめて秘密の一つくらい、握っていたい。狡いやり方でも、彼女の心の隅に引っかかっていたかった。

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