スラムの片隅で夕暮れの赤い光が、スラムから少し離れた通りを照らしている。ここはまだ「まともな人間」が歩く場所だ。だが、その足元に転がる小さな影は、スラムの子供たち。彼らはこの世界の隙間を巧みにすり抜け、生き抜いていた。
ガラドは路地裏の壁に背をつけ、通りを歩く男をじっと見ていた。身なりはよく、腰回りが少しだぶついている。あのポケットには金が入ってる。そう直感で分かった。
「ダン、いけ」
ガラドが低く囁くと、ダンはニヤリと笑い、軽い足取りで男に近づいた。
「すみませーん、おじさん!」
無邪気な声を作り、男の袖を引く。その瞬間、男が注意を向けたのを確認すると、ガラドは影のように動いた。男のコートの隙間に手を滑り込ませ、ポケットから硬貨の詰まった小袋を抜き取る。指先に感じるほどよい重み――成功だ。
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