芸術家たちの行く手を阻むのは不理解な俗物ではない。
この、歴史的な酷暑である。
貴重なオフの日を過ごす宗とみかは現在、照り返しで茹だった舗道をのろのろと並んで歩いていた。以前から目をつけていた美術展の初日とあって、帰国していた宗が暇そうなみかを誘い今に至る。
抜かりない宗の被る帽子は、ドレープが優雅なキャペリンハット。そしてふたりとも各々自前のサングラスを装着しては、強烈な日差しと通行人の視線から身を守っている。
しかしみかの方はというと、サングラス以外の日除け対策を今日もしてこなかった。与えた日傘を一向に活用しない体たらくに呆れつつも、宗は己のそれの半分にみかを招き入れてやるほかはない。こんな灼熱地獄に身を晒せば日焼けどころか、熱中症による救急搬送の危険すらあるからだ。
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