「この店にも、もう何度も来ているね」
行きつけの中華料理店。みかとふたりでテーブルを囲んでいる宗が、運ばれてきた品々を皿に取り分けながらつぶやいた。
目の前に差し出された回鍋肉へ一瞬視線を落としたあと、宗へと焦点を戻したみかは眉をハの字にする。
「んあ〜? お師さん、ここの中華飽きてもうたん?」
「そうとは言っていないけれど……」
まあまずは食べたまえと、宗は傍らの容器から割り箸を取り出してみかへ渡した。「おおきに、ほないただきます~」と両手を合わせたみかが、ぱきんと小気味いい音を鳴らす。
そうして熱々の料理を食べ始めたみかの姿を、宗はお冷やを飲みながらぼんやりと眺めていた。
「あちち。ふーふーせなあかんなぁ」
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