右へひとつ、左へふたつ。
体を柔らかくしならせ、軽やかにジャンプ。着地した慎ましやかな足先が浅い雪に小さな穴をあける。
冷たさも気にならないくらい気持ちがいい。しばし立ち止まって、低い太陽に向かって目を細める。こんなに気持ちが弾むのは、この先でお宝が待っているからだ。俺の大好物。大きくて新鮮な——
──シカの目玉。
昨日、森でまだ新鮮なシカの死体を見つけたのだ。肉をいただいた後、俺は上手に爪を使ってその目玉を取り出した。他のキツネたちは、目玉なんて食うのかと鼻で笑う。だがあの弾力がある口当たりは最高だ。しかもめったに手に入らない。一つをたっぷり堪能したあと、もう一つを地面に埋めておいたのだ。
サクサクと黒い足先で雪を踏みながら歩くと、大きな木の下に着いた。はやる気持ちを抑えながら雪と土を掘り返す。だが、しばらく掘ったところで前足を止めた。
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