カカオも豆には違いない二月十四日、月曜日、天気はすこぶる良いが、冬の風が身を突き刺してくる。
「…………」
表情にこそ出ないけれども、今朝の寒さは堪える。阿波多えくぼは真白く溜め息を吐いた。己の職場である警視庁は地下鉄の駅を降りて徒歩数分という、都の主要機関ならではの好立地ではあるけれども、その地表に上がり空っ風に吹かれる数分すら惜しい、というのはワガママだろうか。クローゼットで眠っていた一番厚手のチェスターコートですらも、気休めにしかなってくれない。いっそ雪でも降ってくれた方が地表に熱が籠ってくれたかもしれないが、哀しいくらいの晴天である。これから陽が高くなるにしたがって、気温も上がってくれればいいのだが。
「…………さむ」
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