kill time「あれ~どこにやったかな」
棚に並べられたファイルを取り出しては、綴じられた中身を確認し、元の場所に戻す。その作業を、十数分前から繰り返している。
犬飼は作戦室で書類を探していた。およそ一年前ほどに配布されたものが今になって必要になったのだ。二宮隊の作戦室はそもそも私物が少なく、あるとしてもこのオペレータールームのどこかのはずである。
「クッソ、なんで今更……」
一人悪態をついても出てこないものは出てこない。自分を含めた誰かが持ち帰っている、または既に破棄されている可能性もあるが、内容的にボーダーで使用するものだから個人が持ち帰って保存、ましてや破棄していることは考えにくい。
まだ探していない棚の上のほうに手を伸ばす。ここは取り出しにくいため、あまり使わない書類がまとめられている。隙間を埋めるようにびっしり並べられたファイルを取り出すと、一緒になって一枚ぺらの紙がひらりと宙に舞った。
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