暁星きたる霧のない空が朝焼けに燃え、新しい一日の幕開けを倫敦に告げている。
バンジークスは執務室の窓越しに街が目覚めるさまを眺めながら、今頃
出航したであろう極東の弁護士たちを思っていた。
港もきっと晴れていて、未来ある旅立ちをこの朝焼けが彩ったことだろう。
帰国の日時は御琴羽教授から聞いていた。
親しい者たちは見送りに行ったのだろう。自分も行くべきか悩んだが、
”死神”が顔を出して水を差すよりも、検事局から旅路の無事を祈る方が
ふさわしく思えた。
所詮、自分と彼らは裁判を通しての関係だったのだ。…一人を除いて。
「なんだ、もう来ていたのか!」
感慨にふける最中、扉が開く音と同時に飛び込んできた大声に驚き振り向くと
同じく驚いた顔をした亜双義一真が立っていた。
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