吾の慈悲に晒せ喉笛ページをめくるごとに、古い紙の匂いが広がる。
随分長いこと開かれなかったその本の背には「武器の歴史」の題。
己の魂である日本刀・狩魔を親友に預けた今、亜双義は手元にある
洋刀をより使いこなすためにバンジークス邸の書庫を探索し、
奥でうっすらとほこりを被っていたこの本を見つけた。
すでにバンジークスが背を預けるに不足はない腕前の自負はある。
しかし何事も中途半端を嫌う男だ。
まだ向上する余地があるならば学び鍛錬せずにはいられない。
知識から得られるものもあるだろう、と貴重な休日に書を読みふける。
「騎士は短剣をmercy(慈悲)と呼んでいたそうだ。
苦痛を長引かせぬようとどめを指す”慈悲”とは、有難いものだな」
亜双義は感心して呟き、そばにいる男の顔を見る。
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