名前の話 続き「──我が家では『名』は一種の[[rb:呪 > まじな]]いという考え方があります。名によって個人は縛られるということですね」
都内某所、喧騒から逃れた日本邸で二人は一風呂浸かってしっぽりと縁側で晩酌をしていた。
ちょうど元弟の記念日もようやく過ぎ去り、体調が安定してきていた。そんな病み上がりに日本で出張があって、彼の家の世話になっていた。
日本の落ち着いた声で語られた異文化の魅力に引き込まれる。少し前のめりになりつつ、イギリスも口を開いた。
「なるほど。名前の話では言うなら俺たちの文化圏では、悪魔の名前を当てられたら何もされなかったなんて話なら山ほどあるな」
「ほう、そうなのですね。こちらでは逆に山で名前を呼ばれても返事をしてはいけないという話がありますねぇ。古今東西、あまり変わらないようで」
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