赤銅 サイボーグに改造されてから初めて見た夕日は、世界を飲み込まんばかりの、赤銅色をしていた。
それがあまりにも隣にいる男の髪に反射し、きらきらとその糸を映えさせているものだから。
「っ?!」
「…あ、すまん」
何故引っ張ったのだろう。奴の性格を表したような重力に逆らう髪を、今度は優しく撫で付ける。そうすればジェットは、撫でづらいだろうとでも思ったのか、俺と視線を合わせるように屈んだ。
「他の奴らに見られてなくて良かったぜ」
「ん?」
「アンタ、急に触り始めるんだもんよ」
気持ちいいのか、目を細め俺の手に擦り寄る。それがまるで大型犬のように思えて、堪らずくつくつと笑いが込み上げた。
俺とジェットの間を、爽やかな風が通り抜ける。マフラーがふわりと揺れ、現実に引き戻された。
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