明日のことを言えば モナミとおれは、揃いの指輪をして、揃いの苗字で生活している。おまけに、住所まで一緒だ。
つまり、結婚した。結婚して、寝食を共にしている。
世間一般の人間が自分の未来を夢想するとき、切っても切り離せないもの。ありきたりな幸せの象徴。ふたりで不自由になる選択。
それが結婚に対する、以前までの正直なイメージだった。
だが、自室の無機質な蛍光灯の下でも、左薬指の銀色は眩しく高潔な輝きを放っている。おれが唯一身に付けているアクセサリーだ。
ありきたりだろうが不自由だろうが、この指輪が他でもないあいつと同じであることを、おれは誇らしく思う。
浴室から水音と歌声を響かせている彼女も、同じように考えてくれていたら。……あいにく、直接訊く勇気は持ち合わせていない。
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