The nearest fixed star「星が綺麗ですね」
社交場の喧騒から離れた、静寂のバルコニーにて。夜空を讃えるヴィオラの呟きに、隣の男は分かりやすく肩を強張らせた。
ギギギ、と軋む音が聞こえてきそうな程ぎこちなく彼女へ振り向き、
「……それは……お前の方が綺麗だ、とか言った方がいいやつか……?」
ムードもへったくれもない返答をした。
「花火じゃないんですから」
「そ、うか……」
流石は交際経験に乏しい副団長さまである。ヴィオラは苦笑を溢した。部下の戯言なんて、適当に受け流せばいいのに。
「いや、その……建前では、ないんだが……」
難しいな、と副団長は困ったように頭を掻く。
意表を突かれ、ヴィオラは目を瞬かせた。
「──勿体無いお言葉です」
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