選ぶべきは「怪我をされた方はいらっしゃいませんか!治療致します!」
下区の混乱した町を駆ける、素早く動く大型分霊からは目を離さぬように注意しながら。
突如として上区と下区に出現した大型分霊は以前中区に現れた個体よりも小さく、俊敏な動きで私たちを攻撃する。そして何より、以前とは異なって初めから人間への殺意を持っていた。
一般市民の避難すらままならない状況で発令された討伐命令に従い、私は出来る限りのことをしようと走った。上区には家族がいる、だけど皆さんなら生き延びてくれるだろうと私は信じることした。
「う、うぅ…」
「大丈夫ですか?すぐに手当致しますね」
道端に倒れる職員の傍に寄り、怪我の状態を確認する。脇腹が大きく裂けている、身体を貫かれていれば即死だったでしょう。
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