守りたいから避難誘導がなんとか終わり、逃げ遅れた人が居ないことを
確認して一息吐く。
あとは大型分霊をどうするかだけど…
「ひゃっ」
「また地震なのだ~!」
そこまで考えたところで、大きな地鳴りが響き、地面が
揺れた。
大型分霊に目を向けると、少しずつこちらに近づいてる
ような気がした。
どこに向かってるかなんてわからない、でも動き出した
ことは事実。
通知音が鳴った端末を見る、高月からの通達は予想通り、
分霊討伐要請だった。
「こっちに来てるのだ?」
「うん…早く浄化しないと、商店街がなくなっちゃうよ」
商店街だけじゃない、このまま進んでいけば住宅街だって
危ない、そうなる前に止めないと…
「ハジメさん、行きますよね?」
「あ?」
端末を仕舞ったハジメさんはそれだけ言って走り出した。
たぶん、何当たり前のこと言ってんだテメェ、って言ってるんだと思う。
それを見たヒバナちゃんは、待つのだハジメくーん!と
言いながらその背中を追って走り出す。
二人共見切り発車だなぁ…なんて思いながら、わたしも
追いかけるために走り出した。
「…さて」
通達によると、弱点は頭部にある赤い目玉らしい。
しかし、目玉を直接叩くにはハジメさんがあの高さにまで上がるしかない。
わたしの氷の呪術を応用して足場を作って、分霊まで
道を繋げれば行けるかな?足場を安定させるために
影も併用して…
様々な漫画やアニメでインプットしたあれやこれやを融合させてイメージを練り上げていく。
「ハジメさん!」
大型分霊の近くにあった建物の屋上に向かって、氷の道を作り上げる。
少しでも高い場所に上がれば、術の展開がしやすいし、
そこから術で攻撃も出来るはずだ。
ハジメさんは意図を理解してくれたらしく、氷の道を
駆け上がっていった。
「諸々問題なしっと、ヒバナちゃん行こう!」
「了解なのだ~!」
ヒバナちゃんと一緒に氷の道を登り、屋上に降り立つ。
予想通り、ここから術で攻撃できそうだけど、直接殴る
には届かない。
さっきと同じ要領で氷の道を目玉まで届くように
作り上げていく。
「ハジメさん、お気をつけて」
「行ってらっしゃいなのだ~」
返事もせず武器を構えてハジメさんは行ってしまった。
ハジメさんは強い人だから、大丈夫だと信じよう。
「ヒバナちゃん、ここから目玉を狙って攻撃できる?」
「う~ん…やってみるのだ」
わたしの隣に立ったヒバナちゃんが呪符を構えて、
炎の呪術を発動させる。
呪符から燃え盛る火炎が現れ、ヒバナちゃんはそれを
大型分霊に向かって放った。
見事に命中した火炎が目玉を燃やした。
その横で、ハジメさんが足場を蹴って飛び、目玉を金棒で叩き潰していた。
「おぉ!ヒバナちゃんコントロールうまいね?」
「ふふん!それほどでもあるのだ」
得意気なヒバナちゃんに術での攻撃を続けるように
頼んで、わたしは支援に集中しようか。
あぁでも…隙を見て攻撃もしてみようかな。
色々疲れるけど早く討伐するためには出来る限りの手段を使うべきだろうし。
例え限界がきても、あの分霊を倒すまではわたしも倒れるつもりはない。
中区を…実家を守るために、諦める訳には行かないから。