危機一髪 平日の夕暮れ時。相談所にやってきた茂夫は真っ先に霊幻のデスクに向かった。
「師匠、これって何を表しているんですか」
茂夫は右手の親指を人差し指と中指の第二関節の間に滑り込ませ、霊幻にそれを掲げるように見せた。間に挟まった親指の頭をぐにぐにと楽しそうに動かしている茂夫を見て霊幻は飲んでいた煎茶を吹き出した。
「!? バ……ッカお前! すぐ止めろ、死ぬぞ!」
「え、え? 死?」
「お前それ他のヤツに見られなかっただろうな……特に女子……ツボミちゃんに見られたら死ぬぞ」
台拭きをひっ掴んで濡れたデスクを乱暴に拭きながら、「誰だよ、モブに変なこと教えやがったヤツは」と心の中で悪態を吐いた。茂夫は予想外の霊幻の強い言葉に酷く狼狽している。
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