終業式通学路の紫陽花が、枯れたまま半年もそのままになっているのを見て、この花は茶色く変色してもそう簡単には落ちてしまわないのだということを初めて知った。そもそも花弁に見える部分は実は花ではなく萼であるという話を見たことがあるような気がする。確か、そうだ。小さい頃に母親から買い与えられた図鑑で見た。
確かに梅雨の時期には鮮やかな紫であったはずのものをちらりと見ながら通り過ぎる。去年だって一昨年だってこの通学路を通っていたはずなのに、その存在に全く気がついていなかった。過去の自分は、一体何を思いながらここを歩いていたのだろう。そんなことを考えていると、視線に気がついたのか横を歩く百瀬が「あじさいだねえ」と右手に持つスコップで枯れた花……萼、を指した。
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