こっちを向いてハニー 校舎裏の日当たりがいい場所にツツジが植えられている。濃いピンク色、淡いピンク色、白色、目を楽しませる鮮やかな花を咲かせていた。今日もアイツは蜜を吸いに来るのだろうか。休み時間、空き教室から眺める。
(あ、来た)
同級生の松本がキョロキョロと周りを気にしながらツツジの植木に近づく。きっと上から見ているとは思ってないんだろう。今日も優しい手つきでツツジに触り、プチりと摘んでいる。そのまま口に含み、数秒目を伏せて蜜を吸っていた。
たまたま見た、ツツジが咲き誇る場所に坊主頭があって、ポツンと浮いている風景が何だか面白く、時折、空き教室から眺め始めたのがきっかけだった。クラスは違うが同じバスケ部で、真面目そうな雰囲気のヤツ…という印象だったのに、蜜を吸う所を見てからは何だか可愛くも見えてきているのだ。
775