深松 『通販戦争に俺は勝つ』「何してるピョン?」
「グッズの通販戦争だ」
「通販戦争…?」
真剣な顔をしてスマホを見る松本に声をかけると、画面を見ながら答えが返ってきた。首を傾げながら松本のスマホ画面を見せてもらう。
そこには『申し訳ございません。ただいまサイト内が大変混雑しております。しばらくお時間を置いてからお試しください。』の文字と桃色のキャラクターが涙目で倒れているイラストが描かれていた。
「くそっ…一向に画面が変わらねぇ」
「何か欲しい物があったピョン?」
「ん?…ああ、デフォルメされたフィギュアが欲しかったんだ」
画面をスワイプしてお目当ての物を見せてもらうと、小さな坊主のフィギュアが並んでいる画像が映っていた。そもそも松本はグッズを買うことは今までなかったと記憶している。
このフィギュアだけ特別なのが不思議でしょうがなかった。
「俺たちと一緒の坊主だピョン」
「…ああ、そうだな」
「どうしたピョン?何か言いたげだピョン」
「その…このキャラクターさ、…深津に似てるなって思ったら、どうしても欲しくなって…」
頬を赤らめ恥ずかしそうにする松本を凝視した後、画面に映っているフィギュアを改めて見る。
「俺の方が可愛いピョン」
「ん?」
「…俺の方が可愛いし、格好いいし、バスケが上手いピョン」
「……お前、フィギュアに嫉妬してるのか?」
ふはっと笑う松本の腕をとり、「せっかくふたりっきりなんだから、俺をかまえピョン」と言いながらスマホを取り上げ、ぎゅうっと抱きしめた。
「はいはい。分かった分かった」と背中を優しく叩いてくる恋人に「俺に似てる物じゃなくて、俺を欲しがれピョン。俺ならずっと近くにいるピョン。なら、俺でいいはずだピョン」と自分でも何を言ってるのか分からないなと思いながら、松本の唇に噛み付く。
「物はコウイウことはできないピョン」
「……深津、お前なぁ〜」
呆れたような顔をしているが俺とキスするのが大好きなくせに。次のキスはとろとろになるくらい濃厚なやつをしてやる。
深津はそう心に決めながら、松本の唇を奪うのだった。
おわり