先生を失ったディミトリの話 尋問と称した拷問で爪ははがされ、はがす爪がなくなれば太い木の棒で殴られた。肉が割れ、血が噴き出る。紋章の力も、苛まれて弱った体では発揮しようもなかった。
時間間隔を狂わせるように、食事の時間はまちまちだった。人が食べるものではない、と兵がそしったカビの生えたようなパン、乾いて固くなったパンを泥水のようなスープで飲み込む。もとから味など感じていないから食べられればなんでもよかったが、腐ったものだけは受け付けず嘔吐した。そして拷問が繰り返される。
最初は同情的で暴力的な同僚を諫めていたおそらく一般の兵も、やがてコルネリアの息がかかった兵たちと同様に残虐なふるまいを見せるようになっていた。ディミトリが守ろうとした王国兵もだ。促され、鞭を振るった瞬間から人が変わっていく。術をかけられているのだと、ディミトリは思った。兵士は悪くない。だからどんな扱いを受けてもひたすらに耐えた。
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