そうはならんやろ 修道院の片隅、人の気配はない代わりに自然の多い一角でベレスは屈みこみ、後を追ってきた犬たちの頭や腹を撫でたりと戯れていた。
「あ、こら。ダメだよ。これは君たちの分じゃないんだから」
脇に置いた軽食が入ったかごを催促するようにとがった鼻先と突かれ、ベレスは慌ててかごを膝の上にのせて上着をかぶせて隠す。食べ物を隠されてもなお犬たちはくんくんと鼻面を寄せてきたが、ほだされるわけにもいかない。ベレスは食べ物を上げられない代わりに、手を伸ばして彼らの頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
この犬たちは修道院で飼われている。他にも猫や梟などもいるが、ただ愛玩用に飼われているわけではない。害獣の駆除したり不審者や不心得者に対処したりなど、彼らは彼らなりの仕事を任されているのだ。
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