真名を聞かせて「最近親分、元気なくないか?」
黒や茶や、白や斑、様々な毛色の猫又たちが、マタタビの木の枝を囓りながら、噂話をしていた。
ここは雲夢。蓮花湖とその周りの平地、そして低い山が連なっている。人も多く栄えてもいるが、緑豊かな場所だ。
その山あいの、人里から隔離された場所に、猫又などの、動物が変化したあやかしが多数集まっていた。彼らは長生きした猫たちが変化した者で、尾を二本持っている。まだまだ新米猫又の彼らは、一本は元々ある長い尻尾だが、もう一本は短い。
「でも時々山の上で叫んでたり、見晴らしのいい一番高い木の上に乗って、よく東を眺めているぞ。」
「東になんかあんのかな?」
「東なんか、姑蘇っていう場所しかないだろ?」
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