朝がいちばんふさわしい1
───────神様というものがいるならば、こういう形をしているのだろうと、男はその時、確かに思った。
「まあまあ、親分さん。このひと、こんな場所に慣れていなかったんでしょう。ゆるしてあげたら?」
男の前に現れたのは、少女だった。どれだけかさを重ねて見ても、十ほどにしか見えない少女。真っ黒な髪が、畳を擦っていぐさの切れ端をさらってゆく。
そんな幼子が、今自分を庇っていることを、男は信じられなかった。
「……だがなあ、こっちも賭け事だ。無償で帰すってのは、面目が立たねえ。これは金額の問題じゃないんだよ嬢ちゃん。面子の問題なんだ。おれは例えこいつが一銭チョロまかそうが、同じように許さないだろうさ」
「あら、それも確かにそうですね。では、ええと……そうだ。それに見合うものをお渡しすれば、親分さんは納得していただけるのですよね?」
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