IKL幻覚雨クリ小説④(終) ――空を飛べるか?――
アメヒコのその問いに、空気がぴり、と凍り付いた。
「……空を飛べるか、なんて、変なことを聞くんだね。人が空を飛んでるところ、見たことあるの?」
ソラはからかうような口ぶりで、アメヒコからの質問をかわした。
「いや、ないな」
「だろうね。僕も、人が空飛んでるところは見たことないよ」
嘘ではない。が、真実でもなかった。
ただ少なくとも今は秘密を打ち明ける必要性を感じない。
「ていうか、なんでいきなりそんな話?僕別に、空想の話で盛り上がりたくて来たわけじゃないんだけど」
クリスさんの話とか、氷結をどうするかとか、そういう話をするべきじゃない?と促すが、アメヒコは窓の外の、どこか遠くをみたまま、うわごとのようなことを話し続ける。
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