花火社内が静まり返る時間。最上の執務室には、指がキーボードを叩く音だけが響く。最上がパソコンの画面と睨めっこしていると、ドンと大きな音が外から聞こえてきた。音の方向を見ると、大輪の花が夜の空に咲いている。
「花火、なんていつぶりでしょうか」
働き詰めだった最上は立ち上がって、ぐっと伸びをした。ガラス張りの執務室からは、花火がよく見える。少し休憩にしよう。そう思って、スマホだけをもって執務室を出た。
ガチャリと鍵を開けて、屋上に出る。途端に吹きこむ夜の風に、気持ちよさに目を細めた。普段は立ち入りを禁じているここに入れるのは、ギルドマスターの特権だ。
花火が綺麗に見える特等席にひとり、転落防止の柵に腕を乗せて、頬杖をつく。次々に上がる花火に、むくりととある気持ちが頭をもたげた。
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