クリスマス、というのは特別な祝いの日であり、華やかで喜ばしく、大多数の人間が待ち遠しく思う日――――らしい。
十二月も後半に差し掛かってくると、軍部とはいえ空気が浮つき始める。家族や友人、恋人とどのように過ごすのか計画しはじめたり、贈り物を考えたり。そんな彼らは皆一様に幸福そうな表情をしており、それを見ていれば「悪くないな」とは思う。張り詰めた日々の中、息抜きや娯楽は必要不可欠と言っても過言ではない。それを各々が勝手にやってくれるというのであれば、こちらもあれこれ用意する手間が省けるというものだ。
ほとんどの隊員には当日休暇を出し、勤務の隊員にも早めに帰宅指示を出す。自分まで早く帰る必要はないのだけれど、残っていると気を遣って帰らない人間が出てくるため致し方ない。分厚い紙束を鞄に仕舞い込み、早々に帰路につく。
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