結局のところは あの人は癖毛ではない。
あの人は声が低くない。
会う男全てにかの人の面影を探す自分に心底嫌気をさしながら、それでもなけなしの自信を取り戻すために話しかけてきた男へ笑う。大衆向けにと作られた料理と並ぶ酒。
隣に女、向かいに男。
狩人は所謂合コンの真っ最中である。
発端など何もない。
ただ、意中の男に一切相手にされず癇癪を起こした女の意地の成の果て。魅力がないのか年の差か、もしやもう恋人がいるのか等と思い悩んで早幾年。
おこちゃま、マセガキ、お嬢ちゃん。
何時まで経っても子供扱いの憎くて愛しいひげ面の雄は、少しでも女の魅力を身に付けようと躍起になっていた狩人の努力を粉々に打ち砕く。そのくせ、宥めるように頭を撫でるのだから質も悪い。散々女に言い寄られて、めんどくせぇと言いながら狩人には構う雄に、期待するな等と殺生な仕打ち。 手のひらの上でころころと転がされても、何だかんだと耐えてきた、のに。
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