佐々木は今日も舞台に立っていた。だが、その舞台はいつもの教室ではなかった。
そこは体育館だった。
ステージの上でマイクに向かって話している人物がいる。それは望ではなく、本物の佐々木だった。
「はい! 私は今から、皆さんの前で歌います!」
そう言って、彼は歌い始めた。
『私は、もう、ダメなの』
曲のタイトルが画面に表示される。
『私には、何もないわ…………』
佐々木は歌う。
『あなたと会って初めて知ったのよ』
画面では、アニメの絵が表示されていた。そこには一人の男性が描かれていた。眼鏡をかけた着物姿の男性だ。
『せめて夢の中で会いたい』
そこで映像が終了する。
「ありがとうございました!」
佐々木の声と同時に拍手が起こる。観客の中にいた一人の女子生徒が立ち上がった。彼女は言う。
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