狂気と現の狭間 仄暗い室内は、窓から差し込む日光だけが灯りの代わりとなっていた。
その窓の近くに車椅子を移動させ、外の景色を眺めている者がいた。
スーツ姿ではあるが、露出している肌の部分はほとんどが血の滲んだ包帯で覆われている。
隙間から見える瞳は不気味なもので、白目の部分はほとんど漆黒に染まっていた。
「社長、失礼します・・・・」
背後から声をかける者が一人。
やや猫背で小柄な、白衣を着た男だった。どうやら医師のようだ。
片手に盆を持ち、その上には新しい包帯や消毒液の入った瓶などの医療道具が揃えられている。
男は窓の外を眺めたまま、答えた。
「嗚呼・・・頼むよ。今日は少し調子が良い。好きに替えてくれ」
「それは・・・何よりです。では、失礼します」
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