準備走る自分の足音に紛れて、追いかけてくる足音が接近してくるのを、彼は聞き取った。
「フフッ・・・ウフフッ」
彼は狭い路地の途中で足を止め、笑い出した。
顔の辺りから液体のようなものが伝う感触がする。これは自分の血だ。だが痛みはない。
「まだだ・・・まだ足りない」
パニムはがりっと首に爪を立てる。
隠れるなら、遠くよりも近くの方が見つかりにくい。
だからウィレミアムと繋がりがあるファイズ・ファイアに入った。
名前も姿も変え、ウィレミアムと関わらない任務に赴くようにしてもらった。
それでも、不安は消えない。
変えなきゃ。まだだ。この体格でも感づかれるかもしれない。
マスクを剝がされたら、気づかれてしまうかもしれない。
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