番外編:こぐまさがるの、なまえ。 此の世界では、ひとは名を持って発現する。
名は[[rb:器 > からだ]]と[[rb:魂 > こころ]]の結びである。名を疎かにすることは、魂のあくがりを招く。あくがれた――解き放たれ、器を持たぬ魂は、放置すれば世界に融ける。
名は結びであり、言葉である。
言葉によって己の名を認めることではじめて、ひとはここに在る。
ゆえに、発現したばかりで言葉を持たないおさないひとびとは、形を成しつづけるために他から名を呼ばれるが必定となる。
おさないひとの名を知る術を持つものは幾人か存在するが、「きまり」として、「番人」の役をおうものは必ず名が見えた。
◇◇◇
常春の陽気が新緑の薫りとともに、よろず屋と銘うたれた邸を包んでいる。
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