どうぞ美味しく召し上がれ ぷしゅっ。
冷えたエナドリのプルタブを起こすと同時に溜まっていたガスが抜ける音がした。
そのままプルタブを下げて、口に含むとしゅわしゅわと弾ける炭酸と液の甘さが舌や頬の粘膜にねっとりと絡みついてくる。数口だけ飲んでから缶をローテーブルに置いた。
置かれたエナドリの缶から垂れ流れる水滴で静かにテーブルが濡らされていくのをそのままに胃からせりあがってきたおくびを宙に放つ。
――俺は好きじゃねぇけど、よくこんなの飲めるな。
先ほど舐めた唇が糖分でべたつき始めていた。
こんな甘いもの、本当は好きではない。兄が好きだという味は弟である俺には理解できない。双子なのに味覚は元から違うようで、思えば千空は昔から甘いものが好きだった。
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