月の光で咲く花の色は 青白い月の光の中、照らされる白い肌はきっと美しいのだろう。
石神村から少し離れた山の中。元は獣道だった道なき道の草を刈り取り、幾多の足で地を踏み固めて整えられた小道を登っていく。
過去に千空が獅子王司の手によって命を絶たれ、コハクが姉のために湯治の湯を組んでいた場所に慰安の場所として温泉が設けられている。そこから少し離れた木の上で僕は幹に身体を預けて枝先へ向かって足を投げ出していた。
――女性の湯に覗きを働こうとする不埒な輩を持ち前の聴力と目で見張って欲しい、そう千空から依頼を受けての見張りだった。
それなのに、見張りを開始してから最初に聞こえた足音は頼んできた千空のものであった。もしかすると、頼んだとおりに仕事をしているのかを探りに来たのだろうか、いや千空は頼んだ以上は相手を信用している。時間を割いてまで相手の動きを確認しに来るようなそんな非合理的なことはしない性格の人間だ。
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