深海に降る雪 防衛機密・軍事機密それが潜水艦だ。多くの情報が出回ることは国の安全に危険を及ぼすこと。そのため同じ海自で階級が上の人間であっても、相手が水上の乗組員であれば絶対に秘密を口にすることは出来ない。
陸と違って目視で情報を得ることの出来ない海中、ソナーマンである僕はあらゆる情報を聞き取る。潜水艦の主な目的は二つ。一つ、敵の主力艦を見つけ、気付かれぬように討ち取ること。二つ、自分たちを狙ってくる敵の潜水艦を見つけて討ち取ることだ。どちらも自分たちが見つかる前に相手を見つけて行う速さ勝負、その一点に尽きる。
石化前は海自のトップクラスの聴力の良さで潜水艦のソナーマンとして働いていた西園寺羽京は獅子王司によって再び世界に目覚めさせられた。再び目を開けてみる世界は姿かたちを変えていて、帝国の王として、リーダーとして中枢にいた司は自身の目指す理想のために人であることの石像を破壊していった。あれは人ではないのだ、ずっとそう自分に嘘をつき続けて心を痛めていた羽京は科学王国の勝利という形でようやく苦しみから解放された。
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