星屑荘:導入『星躔の干渉』――――――
「気持ちの悪い空だな…」
バルコニーで煙草をふかす荒城はそう呟いた。
雲ひとつない夜の空。そこには雲だけではなく、月も星も見当たらない。夜が更けるに連れてビルの光が一つ一つ消えていく。その度、漆黒に塗りつぶされていくキャンパスのように風景は闇に染まりつつあった。
何となしだった。何となしに自室からラウンジルームに足を運び、そこのバルコニーで煙草を吹かしただけのはずだった。だというのに、まるで今日の夜は“これから不吉なことが起きるぞ。”と警告しているかのようだ。
「はぁ……面倒ごとは御免こうむるぜ」
携帯灰皿に煙草を押し付け、室内に入ろうと踵を返す。
「ん……?」
その時に初めて荒城は空を見上げる少女の存在に気がついた。この神奈川分家の吉備当主を任されている吉備回子である。
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