「ーー…。俺と一緒に、帰りましょう」
あの日の敵の男が、微笑みながら俺に手を差し出す。その手を取れば何か分かるのだろうか?と手を伸ばす。
だが、男の手に触れる寸前、男の首は切り裂かれ血飛沫をあげて膝をついた。
それでも、男の声は変わらず続く。
「俺、貴方に拾われて良かったです」
「貴方は糞だけど、それでも貴方を守るって決めたんです」
「就任おめでとうございます、俺はついて行きますよ」
この死体から流れる言葉は全て聞き覚えがあるように思える。
懐かしい…。とそう思えた。
俺の名前が呼ばれ、死体を見る。
「御無事で良かったです…っ。俺と一緒に、帰りましょう」
「ファミリーに」
あの時、"俺の領地"で、あの男が言いかけていた言葉がこの目の前の死体から発せられた。
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