起こしてしまわないようにと細心の注意を払いつつ、隣で眠る彼の横顔を見つめる。
いまは伏せられた瞼を縁取る睫毛は長く、黒く艶めいている。しっかりと通った鼻筋は美しく、唇もまた揃って整った形をしていた。その唇が自分に向けて愛を囁いてくる様子を思い出し、胸に甘い疼きが走る。意識を逸らすように視線をずらせば、枕へと押し付けられたやや癖のある黒髪が目に入った。その下に隠された短く刈り上げられた部分の感触が恋しくなって手をのばしかけたが、彼の眠りを妨げてはいけないと自分に言い聞かせることで我慢する。
気の済むまで彼――豊前を眺めることのできるこの時間は僕の密かな楽しみだった。起きている時に見つめても彼は気にしないと思うのだけれども、あの赤い瞳と目が合うとどうしてもこちらが気恥ずかしくなってしまう。
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