冷えた空気は、いつの間にやら温度を上げていた ふ、と意識が浮上したのは、太陽の光を感じたからだった。ゆっくり瞼を開く。朝日がカーテンの隙間から室内に流れ込んでいた。それに眉をひそめながらもベッド横のカーテンを開ければ、薄暗い室内が明るくなる。冬の朝日はどこか鋭い。空気が冷えているからだろうか。そんなことを、寝起きのややぼんやりした頭で考えていた時のことだった。
「んん……」
唸るような、ぐずるような小さい声が耳に入る。視線を落とせば、そこでは桃樂亭が不満気に眉を寄せながら布団の中へ潜りこもうとしていた。こちらの視線に気が付いたのか、一瞬眠たげな眼でこちらを見たそいつは、けれどそのまま布団を被る。布団の隙間から、ふわふわとしたくせ毛が覗いていた。それを意味もなく拾って指先で遊ばせていると、目から上だけを覗かせたそいつが、小さく「さむい」と文句を言う。
4776