無題 何の連絡もなく京極の家を訪ねてきた武智に対し、彼は呆れながらも普段通りに居場所として提供してあげるつもりだった。だが武智は家へ入ろうとしなかった。彼が必死な表情で聞いて欲しいことがあるというので、京極はサンダルを履いたまま庭先へ出た。
しばらく黙っていた武智は深呼吸をすると、口を開いた。
「耀司さん、好きだ」
武智はみっともなく顔を赤くして言った。
京極は一瞬でも武智を愛おしいと思ったことを恥じ、自身が働く学園の生徒を相手にするように彼へ憐れみの視線を向ける。
「……ああ。ありがとうな」
「そうじゃない」
分かるだろうと睨まれ、京極は思わず足をすくませた。
「生真面目なエイタらしくないな。俺はあんたより一回り以上も年上だ。それに俺もあんたも男だ。障害が多い……ククッ、馬鹿げていると思わなかったのかい?」
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