無題「あれも事務所の方針なワケでしょ? ちゃんと手綱握っとかなきゃダメだよ。芸歴はあっちの方が長いと言っても、葛之葉さんの方が年上なんだから」
「お心遣いありがとうございます」
「やりにくいこととかあったら言ってよー。俺、葛之葉さんの為なら頑張っちゃうからさ。勿論、Legendersさんにお願いしたい仕事もあるからさ。今度、いろいろお話しさせてよ」
葛之葉は笑みを崩さず、再度ありがとうございますと頭を下げる。「プロデューサーに相談してみますね」と続ければ、男は明らかに興を削がれた表情をした。
「あー……そう。じゃあ、プロデューサーさんにもよろしく言っといて」
「はい、伝えておきます。今日はお疲れ様でした」
男が去るのを見届けてから、葛之葉は小さく息を吐いた。
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