七人の男 敗戦。それは俺にとって、大きな出来事だった。
エースを奪われたとき、味わった気持ちよりも何倍も衝撃が走った。何か月もうなされているうち、いわゆる「イマジナリーフレンド」のような妄想が頭に出来上がった。
『よ!松本!調子どうだ?』
爽やかに話しかけてくるのは、神奈川代表 湘北高校の三井寿だった。あの後、実は一度出会っていたその時のイメージで彼の姿は出来上がっている。
試合後、手洗いから出てきた三井と俺はこんな風に会話した。
『・・・お疲れ』
俺が最初に口火を切った。礼儀を大切にするのは山王の基本の基本。たとえ負けた相手に出会っても、先に挨拶をするのが山王バスケ部だ。
『あ!お疲れ!』
顔は疲れ切っているけれど、勝利の喜びがまだ声に張り付ていて、そのままの声色で返事をされた。
9408