節分「あかいー」
「ん?おっと……」
豆が飛んできた。俺の肩に一粒、腕にもう一粒。
「へへっ」
「ああ……節分か」
「うん」
次の豆を手にして笑う零くんは、いたずら好きの小鬼のようだ。俺はちょうど読み終えたホームズをテーブルに置き、恋人に向き直った。
「俺が鬼か?」
「っていうか……」
つかんだ豆が飛んでくるのを待っていると、彼はぷいっと横を向き、ポリポリと食べ始めてしまった。それから、照れ隠しなのか、そっぽを向いたまま左隣に腰かけてきた。肩を抱いてもいいものだろうか。時には測りかねる距離感も、また楽しい。
「ん」
「うん?ああ、ありがとう」
顔を合わせてくれないまま豆の袋だけ差し出されたので、手を入れる。適当に取ろうとすると、「数えろよ」と言われた。
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