バレンタイン「あれ、寝ちゃったの?」
「ああ……」
沖矢は、机に突っ伏しているかわいい寝顔に見入っている。この男の前で、安室が眠るとは。こんなにも安心しきった顔で。
(赤井さん、めちゃめちゃ嬉しそうじゃねーか)
放っておけばいつまでも見つめていそうだったが、呼び出しがかかった。
「はい……わかりました。一時間後には」
電話を切った沖矢は、「すぐ戻る」と言って出かけ、本当にすぐに戻ってきた。
「え、もう終わったの?」
「いや、今から向かう。これを」
くうくうと眠る安室の横にそっと置かれたのは、何ともファンシーな、小さな紙の手提げ。薄い水色の地に、星やハートや花が描かれている。
「もしかして、チョコレート?」
「ああ。ちょうど佐藤刑事がいてな。アドバイスしてもらった」
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