五つ子たちは荒野を行く 悪魔の五つ子——かつてその名を轟かせた無邪気な淵源の息子たちは五男を除いてヘカテリス監獄に収容され、そして今不毛の大地に佇んでいた。
脱獄したという訳ではない。その印に彼らは一人を除いてみな囚人服で、勝手に魔法を使えないよう魔法の威力を制限する魔道具を首に嵌められている。
「もしかしてオレら、死んで来いって言われてる?」
思わずそう呟いたデリザスタに、他の兄弟が揃って遠い目をした。
「ひどい。何もしてないのに」
「してましたけどね」
「思い切り犯罪をな」
ファーミンがぼやき、エピデムとドゥウムが真面目に返す。こんな会話をしている場合ではないのではとデリザスタは思ったが、きっかけは己なので黙っていた。遠くの上空に何かの大群が飛んでいるのを眺める。魔心臓さえあれば、と思うが今の自分たちは普通の心臓を一つしか持たないし、魔道具のせいで周囲の職員を殺して逃げることもできない。
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