こんな質問に意味などない「やだー‼︎ オレっちもう飽きた‼︎ やめるこんなの‼︎」
「オレも飽きた。退屈すぎ。今すぐ死にそう」
ヘカテリス監獄に、二つの悲鳴が鳴り響く。
ドゥウムはデリザスタとファーミンを振り返り、駄々っ子を諭すような口調で答えた。
「貴様ら、そんな醜態ではここから出るのに千年はかかるぞ」
「だってよ〜こんな作業マジでつまらねえんだもん」
「そーだそーだ」
二人とも割り振られた作業を指差してブウブウと文句を言う。兄弟達は今、自分達がどんな被害をもたらしたのか資料をまとめる作業をやらされていた。この作業の工程を通して自分を見つめ直せ、ということらしい。
「うるさいですよ皆さん。私の研究の邪魔をしないでいただきたい」
一人だけ違う作業をしていたエピデムが振り返りもせずに言う。彼は、彼自身が研究開発を行なった魔法不全ウイルスについての論文報告や治療法の確立などをさせられていた。
「あーあー一番凶悪なことやってた人がなんか真面目臭いこと言ってらあ!」
「完全に自業自得。オレでもそんなことしなかった」
「貴様は本当に反省しろ」
「私にだけ辛辣なのなぜです?」
退屈な作業をやらされている三人が続け様にそう反駁すると、彼は「オーマイプリン……」と嘆きながら研究に戻る。
その横で、保護観察処分になったはずのドミナも作業させられていた。
「なぜ僕までここで作業を……?」
「バラバラで作業されると管理がめんどいからじゃねえ?」
「そうならなんて雑な仕事なんだ……!」
ドミナが眉を顰めながら呟く。それはほんとにそう、と思いながらデリザスタは机の上の書類を眺め、げんなりとした。
「こんな作業でおキレーな心になれるなら、最初からこんなとこに入ってないっつーの!」
「それはそう」
ファーミンも、いつのまにか取り出したトランプを弄んで完全に弛緩している。
その横で、一人真面目に作業していたドゥウムがなぜか固まっていた。
「『なぜここに入ったのか理由を教えてください』、『ここを出たら何をしたいですか』、『自己PRをどうぞ』、『あなたの強みが分かるエピソードを教えてください』……だと?」
ドゥウムはペンを取り、震える手でそれらを記入しようとして……パタリとペンを取り落とす。
「自己PR……? わ、私とは一体……?」
「哲学」
「聞かれると一番困るやつ」
「戻ってきてください! 放心してる場合ではないです!」
ドミナが慌ててドゥウムを揺するが、彼は頭から湯気を出しバグり続けている。
オレ達、いつになったらここから出られるんだろう。
その光景を笑いながら、デリザスタはそう他人事のように思った。
少なくとも、これでヒイヒイ言っているうちはまだまだ無理そうであった。