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    じろ~

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    じろ~

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    捕まった後、皆でわちゃわちゃしながら行〇てQみたいなことをさせられる五兄弟のSSです!相変わらず捏造しております。

    #五兄弟
    ##五兄弟

    五つ子たちは荒野を行く 悪魔の五つ子——かつてその名を轟かせた無邪気な淵源イノセント・ゼロの息子たちは五男を除いてヘカテリス監獄に収容され、そして今不毛の大地に佇んでいた。
     脱獄したという訳ではない。その印に彼らは一人を除いてみな囚人服で、勝手に魔法を使えないよう魔法の威力を制限する魔道具を首に嵌められている。
    「もしかしてオレら、死んで来いって言われてる?」
     思わずそう呟いたデリザスタに、他の兄弟が揃って遠い目をした。
    「ひどい。何もしてないのに」
    「してましたけどね」
    「思い切り犯罪をな」
     ファーミンがぼやき、エピデムとドゥウムが真面目に返す。こんな会話をしている場合ではないのではとデリザスタは思ったが、きっかけは己なので黙っていた。遠くの上空に何かの大群が飛んでいるのを眺める。魔心臓さえあれば、と思うが今の自分たちは普通の心臓を一つしか持たないし、魔道具のせいで周囲の職員を殺して逃げることもできない。
     ここは魔法界の中で最も危険と言われる土地。ドラゴンや古代のゴーレム、その他妖精種など並みの魔法使いであれば一撃で抹殺されてしまうような強い種族がうようよしており、生えている草木は一本も無く、そこかしこに毒沼が湧いている……そういう土地だ。五つ子たちは今回、ここでしか採れないとある魔法石の調査を命じられ、特別に監獄から送還されてきたのである。
    「囚人に頼むことじゃねえだろ。自分たちで何とかしろよぉ」
    「これも罰の一つなのだろう」
    「あとはまあ、私たちなら職員達と違って死んでも支障が無いからでしょうね」
    「ひどい。オレの人生楽しむ計画がパーになる」
     好き勝手に言う兄弟たちに、ゆらりと背後に影がかかる。
    「だから……なぜ僕まで巻き込まれているんだ……‼」
     そう叫ぶドミナに、デリザスタは憐みのこもった目を向けた。
    「オレらのお目付け役だってぇ」
    「アナタしか今まともに魔法使える方いませんからね」
    「しっかり頼むぞ、ドミナ」
    「ちゃんと守れよ、か弱いオレたちを」
     がやがやとヤジを飛ばす兄たちに、ドミナが額に青筋を立てる。
    「好き勝手言いやがって……‼」
     かくして、兄弟たちの冒険が始まった。


    〇 〇 〇

    しばらくそれらしきものを探し歩いていたものの、ドラゴンやゴーレムに追い回されたり毒沼にはまりかけたりしただけで、収穫はゼロのまま数時間が過ぎていった。
    さすがにストレスがたまりすぎる、とげんなりしたデリザスタはその場にしゃがみ込み適当な石を拾い上げる。
    「もうこれでよくねぇ?」
     そう言うと、ドゥウムが静かに首を振った。
    「さっきもそれ言っていただろう。駄目だ」
    「ちぇー」
     石を放り投げる。それはコロコロと転がっていき、近くの毒沼へ落ちるとジュウッと音を立てて溶けた。離れた場所をふらついていたファーミンが、傍の崖を指さして言う。
    「こっちの下は?」
    「兄者、今の私たちでは落ちたら死にますよ。箒持たされてないですから」
     そう答えるエピデムにファーミンは意味深な笑みを浮かべると、手品のようにあるものを取り出した。
    「それは?」
    「いざって時用に持ってきた命綱だぁ」
    「都合が良すぎて怪しい」
     ドミナが思わずと言う風に零すと、ファーミンは彼の背後に素早く周り命綱を取り付け始める。
    「はっ⁉ 何するんです⁉」
    「お前がここから飛んで調べてきて」
    「絶対に嫌だ‼」
     暴れるドミナに、ドゥウムが呆れたように二男を制止した。
    「やめろファーミン。無理強いは良くない」
    「でも兄者。オレたち今空も飛べないし魔法も弱体化してる。なら普通に魔法使えるドミナに行かせた方が良くない?」
     そう問われたドゥウムは少しの間戸惑ったように口をつぐむ。
    「……それは……そうだな」
    「納得しないでくださいよ! というかどうせこの人のことだから何か仕込んでいるでしょう、綱に! 途中で切れるとかそういうの!」
     ドミナが必死にそう訴えると、ファーミンは心外だという風に飄々と答えた。
    「失礼だなお前。そういうのは気づかれないようにやるから楽しいんだぞ」
    「論点ズレてね?」
     デリザスタが思わずそう言うと、ドミナが必死な目を向けてくる。
    「見てないで止めてくださいよ!」
    「えー、でもオレっちも命綱無しのバンジージャンプなんてお肌に悪そうだからやりたくないし」
    「アンタもコイツ二男を信用してないってことじゃないか!」
     不毛な言い争いを続ける兄弟たちに、見守っていたエピデムが何かをスッと差し出した。
     プルプルと輝く黄色の物体——カスタードプリンである。
    「まぁ皆さん落ち着いて」
    「せいっ!」
     ドミナがすかさずプリンを持つエピデムの腕に頭突きし、プリンが宙を舞った。そのまま重力に呑まれ崖下へと落ちていくプリンを見て、彼は絶叫する。
    「私のプリン‼ 待ってください‼」
     そして綺麗に飛び込みの姿勢を決めると、彼もプリンを追って虚空へと落ちていった。

    「いやこれ大丈夫? さすがに死んだんじゃね?」
     デリザスタがぼそりと言うと、固まっていた兄弟が皆一斉に崖下をのぞき込んだ。
    「ああ、エピデム。まさかこんな最期を迎えるとは」
    「いや何となく想像はついていましたけどねぇ」
     嘆くドゥウムに、デリザスタは思わずそう言う。
    「ドミナ、お前殺人罪でオレたちの仲間入りじゃない?」
     ファーミンがククッと笑うと、ドミナがさすがに焦ったような顔で首を振った。
    「今のはつい……不可抗力ですよ! というか半分くらいはあなたのせいでしょう!」
     また言い争いが始まりかけたその時、はるか下から小さくエピデムの声が聞こえた。
    「勝手に殺さないでください。生きていますよ」
    「えっこの高さから落ちて無事なことある? バケモノ?」
     デリザスタが驚くと、ドゥウムがなだめるように言う。
    「まぁ無事だったならそれでいいだろう。エピデム、こっちに戻ってこれそうか?」
     そう呼びかけると、ややあってからエピデムの声が再び響いた。
    「ビンゴですよ、兄者。ここに魔法石が大量に埋まっています。資料で見たとおりの見た目ですから間違いはないでしょう」
    「おお、でかした!」
    「しかし自力では戻れなさそうですね。石が結構重いですし」
     それを聞いて、残された四人は顔を見合わせた。
    「どーすんのこの状況」
    「ドミナ、何とかしろよ」
     デリザスタとファーミンが続けざまにそう言うと、ドミナが嫌な顔をした。しかし律儀に考え込み始めるあたり、彼の生真面目さは失われてはいないようだ。
    「……固有魔法でお兄様を魔法石ごと押し上げる、とか?」
    「あー、いいんじゃね?」
     適当にそう言うと、「なんだよ全く」と言いながらもドミナは杖を振り上げる。その時だ。
    「おい、上だ!」
     ドゥウムが鋭い叫び声をあげ、ドミナを庇って頭を抑え込んだ。直後、轟音と共にものすごい風圧が兄弟を襲う。
    「あ⁉ こんなときにかよ!」
     空を見上げて、デリザスタは思わずうめき声を上げた。そこには先ほど兄弟たちを追い回したドラゴンが、鋭く光る爪と牙を見せつけるようにして飛び回っていた。
    「しかたない、このまま応戦するしかないだろう」
     ドゥウムが折れた剣を懐から取り出して構える。ファーミンが先手必勝とばかりに手にしたトランプを投げつけ、ドラゴンの翼を貫いた。
     ギャア、と劈くような悲鳴を上げたドラゴンが、目に殺意を漲らせて業火を放つ。それをドゥウムが剣で凪ぎ、風圧で兄弟たちを守るようにかき消した。
     そして、ドゥウムの影からデリザスタが飛び出す。完全に不意を突かれたドラゴンは、真正面からデリザスタの鉾を受けて撃沈した。
     地面に倒れこんで目を回すドラゴンをしり目に、エピデムの救助作業を行っていたドミナが叫ぶ。
    「終わりました! 行きましょう!」
     振り返ると、魔法石の塊を抱えたエピデムがドミナに支えられて立ち上がったところだった。
     兄弟たちはそのまま、ドラゴンから離れるように駆け出す。
    「あーもうぜってぇこんなことやらねぇ!」
     デリザスタがやけくそ気味に叫ぶと、隣を走る兄弟たちが続けざまに言う。
    「でも私たち囚人ですのでね。逆らえませんよ」
    「ルールは守ってやるけどもっと楽しいのがいい」
    「我儘を言っている場合か」
    「なんでもいいですけど、今後二度と僕を巻き込まないでくださいよ!」
     口々に叫ぶ彼らの上空では、ちょうど大きすぎるくらい巨大な夕日が沈んでいくところだった。
     なんかクサい漫画みたいだな、とデリザスタは他人事のように思った。
     




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