ごはんを食べよう それは、シノが初めてヒースクリフに「お目通り」した日のことだった。
ほぼ栄養失調、脱水症状、凍傷寸前の指先でなんとかブランシェット領の城の端にたどり着き、ぐったりと倒れていた少年の体を、庭師が拾い上げたのが5日前のこと。魔法使いだと分かり、また、年頃がブランシェットの嫡男、ヒースクリフに近そうだという理由から、シノは汚れを拭われ、腹いっぱいにパンとスープを食べた後、異例の扱いで領主とその妻、その息子に謁見する権利を得た。
突然暴れて、魔法を使うかもしれない。その懸念から、シノの枝のように細い手首には、魔法使いを封じ込める効果があるとされる魔よけの縄が巻かれている。これは、シノが同意して巻かれたものだ。シノも自分で驚いていた。いくら服と食事を与えられたからと言って、自由を奪うような真似を許すなんて。シノは、何度も重い扉を潜り抜けて、ついに一番豪奢な扉へとたどり着いた。謁見の間だ。
3725