かいじゅう北の国は吹雪だった。
昨日も北の国は吹雪だった。おとといも、先週も、1か月前も3か月前も、半年前も、ずっと吹雪だった。本来あるべきはずの短い夏は雪に覆い隠され、そのわずかな太陽の光を頼りに生きていた人々はみんな死んでしまった。けれどその訃報と嘆き悲しむ叫び声もまた、吹雪に覆われてこの城に届くことはなかった。
そんな堅牢な城の城門を空から超えてやってきた客は、降り立ってすぐに異様な臭気に気が付いた。眉をひそめながら、普段城主がいることの多い大きな暖炉のある居間に顔を出したが、部屋は凍り付くほど寒々しく誰もいなかった。それならば寝室か、寝室の扉は凍りついて魔法でなければ開かない。そうしてたどり着いたのは食堂だった。フィガロは白い息を吐きながら、がらんとした部屋に足を踏み入れる。ここにもまた、先ほど感じたのとは違う異臭が漂っていた。はたしてオズはそこにいた。テーブルに並ぶ2対の食器と、一皿は間食されたようで空になっているが、もう一皿はオズの前にあった。
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