大倶利伽羅くんの苦労性な日常③「光坊、腹減ったー」
聞き慣れた、それでいてここ数日聞いていなかった声がする。
厨に入ってきた鶴丸は腹を押さえながら情けない声を上げた。一週間ぶりの長期遠征からの帰還である。光忠はおかえり、と言いながら冷蔵庫の中で冷やしていたものを取り出した。
「なんだい、これ」
「チョコムースだよ。チョコレートと生クリームを混ぜて冷やしたお菓子」
「ほう」
順番は逆になるが、鶴丸がデザートを食べている間にもう少し腹の膨れるものを作ろうと再度冷蔵庫へと向き直る。夕餉まではまだ時間があるが、満腹になりすぎて食事が入らなくなるのもよくない。
「なんだか今日は本丸中甘ったるい匂いがするなあ」
あっという間にチョコムースを食べ終えた鶴丸が、くんくんと鼻を鳴らす。帰ってきてすぐにここへ来たのであれば、カレンダーなども確認していなかったのだろう。
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