能面の男 大倶利伽羅がある出陣の際に負った負傷でちょっとした不具合が発生していたことに気がついたのはそれから半月後のことである。もっともそれが本当に不具合だったのか心理的な問題があったのか鶴丸は知る由もなかった。
半月ほど前に一振り目の鶴丸国永が折れた。当然のことながら戦の最中のことで、それはそれは勇猛果敢に敵に斬りかかり大将と相打ちになった末とのことである。大倶利伽羅はそのとき同じ部隊にいたそうだ。
――なんだ、その顔は。
二振り目である鶴丸が初めて大倶利伽羅と会ったとき、彼は呆気に取られた顔をした。
その顔とは。
挨拶もする機会を失い、鶴丸は自分の顔に触れる。
目も、鼻も、口もない。
気味の悪い物を見るかのように大倶利伽羅は鶴丸を一瞥する。
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