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    美晴🌸

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    美晴🌸

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    同じ日に顕現した大倶利伽羅の女士の鶴丸のラブコメです。

    ##大倶利伽羅くんの苦労性な日常
    ##くりつる

    大倶利伽羅くんの苦労性な日常 自室へ戻ると鶴丸が部屋で寝そべっているのはよくあることで、大倶利伽羅は部屋へと溜め息を吐きながら部屋へ入り、戸を閉めた。畑当番の後の身体には疲労感が残っている。軽く一眠りでもしようかと部屋の片隅に転がっているクッションを手に取った。このクッションは鶴丸がいつの間にか部屋へ持ち込んだもので、今鶴丸が使っているものと揃いになっている。鶴丸はクッションに頭を載せたまま、なにか雑誌を読んでいるようだった。
    「ん、ああ。これかい」
     主に貰ったんだ、と大倶利伽羅の視線に気がついた鶴丸が雑誌を掲げる。なんの変哲もないファッション誌であるが、鶴丸がそういったものを読むのは珍しい。記憶の限りでは初めてのことだと思う。
     鶴丸はこの本丸で唯一の刀剣女士であったが、いまいちそういったおしゃれというものには頓着しない性格だった。それに対して女性である審神者は不満そうにしていたが、どういった風の吹き回しなのか。
    「ただの刀だったころに拵をいくつも持っていたやつとかいただろ。で、ああいう感じで人間は何着も服を持っているし、自分で服を選べるんだからすごいよねって光坊が言っていたんだ。そういう話をしていたら、ああ、なるほどなって自分の中で繋がったんだ。あんまり拵と服が似たようなもんだって意識がなくてな。で、自分で選べるっていうのは確かになかなか楽しそうだなと思ってやってみたくなった」
     刀意識に因る発想というのが鶴丸らしい。くあ、と欠伸をし横になろうとしたところで、なあ、と鶴丸に声を掛けられた。
    「どれが似合うと思う?」
    「自分で選ぶんじゃなかったのか」
    「自分である程度候補は決めてみたんだが。予算というものがあるだろう。とりあえず一着、決めてみようと思って」
     よくよく見てみれば、雑誌にはいくつか付箋が貼ってある。その付箋のところを、鶴丸が開いた。
    「――まずは水辺の戦闘服とかいう水着ってやつなんだが」
    「それは止めておけ」
     ばっさりと見る前に大倶利伽羅は斬り捨てる。
    「大体、戦闘服ってなんだ」
    「だってそう書いてあるんだ。水辺の視線を釘付けにしてみんなをイチコロって。攻撃力高そうだろ。イチコロだぞ」
    「……それは、優良誤認商品だ」
    「優良誤認?」
     鶴丸は首を傾げる。
    「それが実際の効果よりも優れているように宣伝する、というやつだ。考えてみろ。そんな装備があったら今頃支給されているはずだ。娯楽品として販売されているということは、実際にそのような効果はないはずだ。それに防御力が著しく低い装備は戦場では使えないだろう」
    「ははあ、なるほどなあ」
     伽羅坊は物知りだなあ、と、うんうんと納得したように鶴丸は頷く。どんな水着かはわからないが、そのページは大倶利伽羅に見せられることなく次のページへと移る。
    「次はこの、わんぴーすとかいうやつ。主がよく着ているやつだな。ありふれている形だが一般人としてどこかに潜入するのにはいいかもしれない。この、裾の長いやつなんか、本体は無理かもしれないが小さい武器を隠せそうだ。こっちのぱんつすたいるとかいうのは、わんぴーすよりもいざというときに戦いやすいだろうな。なあ、どれがいいと思う?」
     鶴丸が示した服はどれも鶴丸に似合いそうではあったが、それはさておき、鶴丸はやはりどこまでも装備品を選んでいるという感覚らしい。そこに多少「ちょっとおしゃれな」という意識が加わっただけだ。
    「水着でなければどれだって構わない」
    「どんだけ駄目なんだ水着……。そんなに駄目な装備なのかなあ」
     鶴丸が真っ白な水着を着ているのを想像する。露出はあまり多くない方がいいだろう。女士で顕現した鶴丸の身体は男士のそれとは違い、成熟しきっていない幼さを感じさせる。露出の強い水着はアンバランスすぎて鶴丸の魅力を出し切れないだろう。そこまで想像して、やはり駄目だな、と首を横に振った。
    「実際に着てみれば、掴めるものがあるんじゃないか」
     試着をさせてくれない服屋はないだろう。着てみれば案外、あっさりと決まるかもしれない。
    「なるほど、じゃあ伽羅坊、今から付き合ってくれよ」
    「は」
    「どうせ今から昼寝するだけなんだろ。茶くらい奢ってやるさ。客観的な意見っていうのが欲しいんだ。せっかくだからおしゃれな服を着た俺をみんなに見せて驚かせてやりたいしな」
     そう言って鶴丸は笑い、大倶利伽羅が枕にしようとしたクッションを取り上げてしまった。ここまでくると鶴丸が一歩も引かないことを、大倶利伽羅はよく知っている。大倶利伽羅の部屋を侵食している鶴丸は、当然ながら大倶利伽羅の私生活だってとうの昔に侵食しているのだ。
     大倶利伽羅は考える。先ほどの鶴丸の言動からいっても、鶴丸ひとりで買い物に行かせたところでまともなものを買えるかどうかは怪しい。それとなく、大倶利伽羅が誘導してやった方がいいだろう。
     大倶利伽羅の悩みなど知らず、鶴丸はご機嫌な様子で出かける準備を始めるのだった。
    「そういえば男が服を女に選ぶのは脱がせたいって意味があるってテレビでやっていたな」
     鶴丸は、こんな変なことを覚える前にもっと学ぶべきことがあるのではないだろうか。主に、一般常識だとか。なにも考えていなそうな無邪気な様子に、大倶利伽羅はまた溜め息を吐くしかないのだった。

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    silver02cat

    DONEくりつる6日間チャレンジ2日目だよ〜〜〜〜〜!!
    ポイピク小説対応したの知らんかった〜〜〜〜〜!!
    切望傍らに膝をついた大倶利伽羅の指先が、鶴丸の髪の一房に触れた。

    「…………つる、」

    ほんの少し甘さを滲ませながら、呼ばれる名前。
    はつり、と瞬きをひとつ。 

    「…………ん、」

    静かに頷いた鶴丸を見て、大倶利伽羅は満足そうに薄く笑うと、背を向けて行ってしまった。じんわりと耳の縁が熱を持って、それから、きゅう、と、膝の上に置いたままの両手を握り締める。ああ、それならば、明日の午前の当番は誰かに代わってもらわなくては、と。鶴丸も立ち上がって、その場を後にする。

    髪を一房。それから、つる、と呼ぶ一声。
    それが、大倶利伽羅からの誘いの合図だった。

    あんまりにも直接的に、抱きたい、などとのたまう男に、もう少し風情がある誘い方はないのか、と、照れ隠し半分に反抗したのが最初のきっかけだった気がする。その日の夜、布団の上で向き合った大倶利伽羅が、髪の一房をとって、そこに口付けて、つる、と、随分とまあ切ない声で呼ぶものだから、完敗したのだ。まだまだ青さの滲むところは多くとも、その吸収率には目を見張るものがある。少なくとも、鶴丸は大倶利伽羅に対して、そんな印象を抱いていた。いやまさか、恋愛ごとに関してまで、そうだとは思ってもみなかったのだけれど。かわいいかわいい年下の男は、その日はもう本当に好き勝手にさせてやったものだから、味を占めたらしく。それから彼が誘いをかけてくるときは、必ずその合図を。まるで、儀式でもあるかのようにするようになった。
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