きみのいるところ 両手でしっかりとコップを持って麦茶をぐいぐいと飲み干していく息子に、精市の母はくすくすと笑みをこぼした。
「やっぱり精市は芸術家だね」
この日、精市は母と一緒に、庭に設置する小さな椅子をこしらえるのに夢中だった。自分のと、歳の離れた妹のための二脚。肘掛けはなくて、背板がある、ごくシンプルな木製のガーデンチェアだ。ドリルでネジを入れるなど母に手伝ってもらったところもあったが、ほとんど自分で手がけた。
朝から作業を始め、お昼ごはんを食べ終えた後もすぐに庭へ飛び出した。妹とお昼寝しないかという母の提案に首を横に振り、焼きたてチーズケーキの甘い誘惑を断ち切って打ち込んだかいあって、ペンキの配合は大成功だ。ようやく納得いく色ができた。
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